国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は8月18日、タイ当局がペッチャブリー県のケーンクラチャン国立公園内でカレン系住民28人を拘束し、うち26人をバンコクの入管施設へ移送したとして、ミャンマーへの送還停止を求めました。一方、タイ国立公園・野生動植物局(DNP)は同地域での取締りについて、HRWとは異なる日付と分類で発表しています。
HRWが伝えた拘束と移送
HRWによると、8月10日、郡当局と森林当局の職員がタイ軍関係者を伴い、国立公園内のバーンパーデーン集落でタイ国籍を示す書類がない住民を拘束しました。対象は子ども8人と妊婦2人を含む28人で、2人は居住登録記録が確認された後に釈放され、残る26人はスワンプルー入国管理収容センターへ移送されたとしています。入管法違反での手続きとミャンマーへの送還を目的とする移送だという説明もHRWによるもので、入管当局の個別発表は確認できていません。
タイ当局の公式発表
DNPは8月9日、バーンパーデーン南部で関係機関と合同取締りを行い、「不法入国者」18人(男性8人、女性10人)と同伴者10人を拘束したと発表しました。合計人数は28人ですが、HRWの説明とは日付や対象者の分類が異なります。
DNPは同じ発表で薬物事件の容疑者5人の拘束や銃器などの押収も公表しています。ただし、この5人がHRWのいう26人に含まれるかは発表から確認できません。拘束された住民全員を薬物・武器事件と結び付けることはできません。
送還をめぐる法的論点
HRWは、ミャンマーへ送還すれば住民を重大な危険にさらすとして、タイ当局に送還停止と収容からの解放を求めています。タイは拷問等禁止条約の締約国で、国内の「拷問及び強制失踪の防止・抑制法」にも、拷問や非人道的な取扱いなどの実質的な危険がある国への送還を禁じる規定があります。HRWは今回の送還が、こうしたノン・ルフールマン義務に抵触する可能性を指摘しています。
HRWはまた、地域住民の証言として、約2か月前にミャンマーへ送還された少なくとも10人と連絡が取れないと伝えています。26人の法的地位、送還の決定・実施時期については、タイ入管当局の発表を確認する必要があります。
情報源
- Human Rights Watch「Thailand: Ethnic Karen Face Deportation to Myanmar」
https://www.hrw.org/news/2026/08/18/thailand-ethnic-karen-face-deportation-to-myanmar
- タイ国立公園・野生動植物局「ケーンクラチャン国立公園、バーンパーデーン南部で取締り」
https://news.dnp.go.th/news/48011
- タイ特別捜査局「Anti-Torture and Enforced Disappearance Act」
https://www.dsi.go.th/en/Detail/133832262790609648
- 画像: Wikimedia Commons「Kaeng Krachan National Park」Pichetveerachai、CC BY-SA 4.0
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kaeng_Krachan_National_Park.jpg