タイ政府がデータセンター事業の規制見直しを進めるなか、バンコク・ラマ9世通り周辺の施設では油を含む排水と沈殿物の処理が、ラヨーン県ではデータセンター建設に関連するとされる廃材の撤去と環境影響評価(EIA)要否の確認が当局の監視対象になりました。急増するデータセンター投資をどう受け入れるかだけでなく、燃料備蓄、排水、廃材処理、臭気を地域社会の安全と両立させられるかが問われています。

続報(2026-09-10)

Thai PBS Worldによると、タイ公害管理局(PCD)と環境当局は2026年9月9日、ラヨーン県バーンチャン郡で、データセンター建設に関連するとされる廃材の不法投棄現場を調査しました。現場では、れんが、石、コンクリート、プラスチック、ガラス繊維などの建設廃材が、約0.25ヘクタールの土地に埋め立て材として広がっていました。

一部では廃材量を10万トン規模とする情報もありましたが、当局は適正処理が必要な量を約20トンと確認したと報じられています。PCDはバーンチャン郡の自治体に対し、許可を受けた産業廃棄物処理業者による撤去を指示しました。自治体側は撤去作業を同日開始し、7日以内の完了を見込むと説明しています。

ラヨーン県天然資源・環境事務所は、対象となるデータセンター建設計画の詳細を天然資源・環境政策計画事務局(ONEP)へ提出するよう求められています。ONEPは、この開発がEIAを必要とするかどうかを正式に確認する見通しです。バンコクの燃料・排水問題とは別の現場ですが、建設段階の廃材処理もデータセンター規制の重要な論点になっています。

続報(2026-09-07)

Nation Thailandによると、公害管理局(PCD)とフワイクワーン区役所は2026年9月6日午前10時、ラマ9世エリアのDAMAC Digital Thailand(BKK 01)データセンターを訪れ、油を含む排水と沈殿物の処理状況を確認しました。施設内の排水貯留部と外側の公共排水路で油分が見つかっており、ラマ9世運河へ流入するおそれがあるとして封じ込め作業が行われています。

施設側は処理業者を使い、土のうで汚染範囲を区切ったうえで油分除去剤を使い、排水を車両で搬出して処理すると説明されています。公共排水路側でも土のうで流出を防ぎ、配管内の油分を清掃し、水をくみ上げて処理する対応が進められています。

同じ施設では、9月初めに周辺住民や事業者から油のような臭いの苦情が出ていました。PCDなどの調査では、施設の排水設備と外側の公共排水路で油膜や油臭が確認され、揮発性有機化合物(VOC)も検出されたと報じられています。フワイクワーン区役所は、排水設備の是正と再発防止を施設側に求めました。

エネルギー省の9月2日の検査では、非常用発電機の予備燃料として20万リットルを超える軽油が保管されていたことも確認されました。エネルギー事業局は、燃料管理に必要な許可がなかったとして軽油の撤去を命じています。

PCDは、処理と清掃が終わった後に、施設内の排水貯留部と外側の排水路でVOC、硫化水素、爆発下限界の測定を改めて行う予定です。公害に関する相談はPCDホットライン1650、同局のFacebook受信箱、またはTraffy Fondueを通じて受け付けると案内されています。

続報(2026-08-05)

タイ内閣は8月5日、データセンター事業の政策委員会設置を定める首相府規則案を承認しました。首相が指名する副首相が委員長を務め、デジタル経済社会相、内相、エネルギー相が副委員長に就きます。委員会は、電力・水資源の配分や利用効率、防火、データ安全保障、環境・地域社会への影響などについて、関係機関へ政策や基準を提言します。委員の任命時期や具体的な規制の施行日は、今回の発表では示されていません。

何が起きたか

Bangkok Postによると、不動産コンサルティング大手Savills Thailandは、タイでデータセンター投資を検討する企業にとって、土地価格よりも電力確保が大きな障壁になっていると指摘しました。データセンター投資家は最大500メガワット規模の電力供給を求めることが多い一方、多くの立地でこれだけの供給力を確保できていないといいます。開発事業者は地域ごとの電力割り当てを順番待ちする必要があり、約150メガワットを必要とする案件の承認件数も、地域の電力網容量への懸念から限られていると報じられています。

背景・送配電網のボトルネック

Nation Thailandが2026年4月に報じたところによると、タイで計画中のデータセンター容量は合計約2.87ギガワットです。専門家は、発電量そのものよりも、必要な場所へ大容量の電力を届ける送配電網に「メガワットギャップ」があると指摘しています。データセンターが集中する東部経済回廊(EEC)の電力インフラは従来型の産業負荷を前提に設計されており、ハイパースケール施設の集中的な需要への対応が課題とされています。

タイ経済・投資環境への影響

タイは東南アジアにおけるデータセンター誘致競争に力を入れています。Nation Thailandは、タイ発電公社(EGAT)がEECの送電能力増強に310億バーツを投じる計画だと報じました。送配電網の整備状況は、データセンターの立地や稼働時期に影響します。

一方で、9月のラマ9世通り周辺の事案は、投資誘致だけではなく、燃料保管、排水、臭気、公共排水路との接続を監督する実務が重要であることを示しました。タイに拠点を置く日系企業にとっても、クラウドサービスやITインフラの現地整備に加え、周辺環境と規制対応を確認すべき話題です。

情報源

- Nation Thailand「Oil-contaminated waste treatment monitored at Rama 9 data centre」

https://www.nationthailand.com/news/general/40070721

- Thai PBS World「PCD orders removal of 20 tonnes of illegally dumped data centre construction waste in Rayong」

https://www.thaipbsworld.com/around-thailand/557669

- Nation Thailand「Rama IX data centre investigated after residents report oil-like smell」

https://www.nationthailand.com/thailand/bangkok/40070657

- Bangkok Post「Oil leak at data centre sparks concerns」

https://www.bangkokpost.com/thailand/general/3315043/oil-leak-at-data-centre-sparks-concerns

- Thai PRD「Prime Minister Stresses Data Center Investments in Thailand Must Drive Real Economic Value」

https://thailand.prd.go.th/en/page/item/index/id/10

- Bangkok Post「Data centre race faces power logjam」

https://www.bangkokpost.com/business/general/3295604/data-centre-race-faces-power-logjam

- Nation Thailand「Thailand's 2.87GW Data Centre Ambition Hinges on Power Grid Overhaul, Expert Warns」

https://www.nationthailand.com/business/tech/40064983

- Bangkok Post「New body to oversee data centres」

https://www.bangkokpost.com/business/general/3297042/new-body-to-oversee-data-centres

- ThaiPublica「นายกฯ ยัน รัฐบาลมีเสถียรภาพ ผลงานประจักษ์ ตั้ง 'คกก.นโยบายดาต้าเซ็นเตอร์'」

https://thaipublica.org/2026/08/anutin-cabinet-5-08-2569/